◎表題の講演会に参加しました。私達がこの一年半駆け巡り、目の当たりにしてきたいくつもの事例、これらをある程度俯瞰(ふかん)的に見たかったのです。
講師は月刊誌「経済」の編集長など歴任された友寄英隆さん。
●今回のコロナパンデミックの特徴として、3つ指摘されました。
1)グローバル時代のパンデミック
2)新自由主義の破たんが明らかに
*エマニュエル・トッド(フランスの歴史人口学者)
「これまで、効率的で正しいとされてきた新自由主義的な経済政策が、人間の命は守らないし、いざとなれば結局その経済自体をストップすることでしか対応できないことが明らかになった」
*感染症指定病床・保健所数の推移
1990年 | 2000年 | 2018年 | |
感染症指定病床数 | 12,199 | 2,396 | 1,882 |
保健所数 | 850 | 594 | 469 |
*国立感染研の研究費と研究者数の推移
2009年・650億円 ⇒ 2018年・415億円
2010年・325人 ⇒ 2020年・308人
3)格差の拡大
*マイケル・サンデル(ハーバード大学教授)
「私達は『皆一緒に頑張っている』訳ではないのです…自宅で仕事ができる人がいる一方で、失業したり、仕事をするためには公共の場所に行って、新型コロナウイルスのより大きなリスクに身をさらさなければならない人達がいました」
「病院で新型コロナ患者の治療をしている人だけではなく、宅配をする人、スーパーマーケット店員…(中略)…これらの人々は、特に高い賃金を得ている訳ではありませんし、社会で最も名誉ある仕事とみなされている訳でもありません。しかしパンデミックで『エッセンシャルワーカー』と呼ばれるようになりました。この人達の仕事が不可欠なものであると気づいたのです」
●コロナ禍で、ますます劣化する日本資本主義
1)劣化の諸現象
・ゼロ金利
・人口の減少
・出生率の低下
2)劣化を引き起こす日本資本主義の矛盾(友寄さんは戦前からとらえていますが、ここでは戦後だけ紹介します)
<1945年~>
対米従属の国家体制⇒地域不均衡(東京一極集中)、原発エネルギー政策、農業などに矛盾
<1955年~1990年>
高度成長政策⇒財政破綻、公害・環境破壊、インフレ
<1990年~>
多国籍企業化、新自由主義路線の推進⇒産業空洞化、格差・貧困
<2013年~2020年>
リフレ政策、新自由主義路線の強行⇒金融バブル、人口減少、経済の軍事化
<2020年代~>
コロナ禍、アベノミクスの大破綻⇒コロナパンデミック、財政・金融危機、スタグフレーション、貧困・格差雇用危機、自然災害・環境危機、食糧危機
3)日本社会の劣化の根源にあるもの
(ここが何を想定されていたか不明。またメールでやりとりします)
◎私は到着が遅れたため、第二会場となり、あいにく音響が悪く、聞き取りづらかったのが残念でした。また第二会場だったため、質問のタイミングも失い、終わると早速友寄さんを探しました。
伺いたかったのは、「コロナの下で生じている日本的特徴」という事です。
答えは「野放しの新自由主義の下で、おそらく矛盾は最も激しいだろう」と。
「ヨーロッパは福祉国家的な要素が日本よりも機能している。そしてアメリカ帝国主義は、新自由主義を許していない」と。確かに、アメリカは国防的な観点から、検査もワクチンも日本よりはるかに徹底していると思います。
CDC(疾病対策予防センター)の職員数は8500人(海外含めると1万4000人とも)、2020年度予算は76.9億ドル(約8459億円)、感染症に限らず疾病全般、産業保健・公衆衛生などを対象としています。 多分国防とも密接に関連しているのでしょう。(国際協調をかなぐり捨て、CDCの予算も減らしたトランプ大統領の下で、コロナ感染は、世界最悪の状況を迎えた時期もありましたが)
◎新自由主義が荒れ狂った下で、コロナを迎えた日本。
国民が苦しんでいるさなか、監視国家めざすデジタル関連法、現代版治安維持法といわれる土地規制法などを、どさくさまぎれのように成立させた菅政権。憲法改定も当然ながら視野に入れている訳で、衆議院選挙で自・公政権を少数派に追い込まなければ、日本社会焼け野原状態となることは必至です。(2021.7.14)