●プログラムの最初は、グリーンディスプレイ青年過労事故死裁判の報告です。全面勝利といえる和解内容、川岸弁護士は、この裁判が築いた新しい峰を、次のように紹介しました。
*「過労死のない社会」は、喫緊の課題であり社会全体の悲願であると司法が宣言。
*「過労事故死」を過労死や過労自殺と並ぶ、労働災害の類型として位置付けた。
*再発防止策(深夜不規則労働に対して、11時間以上のインターバル規制、男女別仮眠室設置、通勤手段に対する安全配慮義務)にまで言及した。
●被害者渡辺航太くんのお母さんである渡辺淳子さんの訴えは、何度聞いても心を打たれます。
24歳の息子を悲惨な事故で奪われた絶望感の中から、淳子さんを動かしたのは、「同じような事故を二度と起こしたくない」という思い。この日も「人間には限界がある。人間は生きるために働いているのであって、命を懸けて働くという考え方は間違っている。過労死を生み出す社会を恥じる」と語りました。語る渡辺さんも聞く私も、いつも涙ぐんでしまいます。
●内田 良(名古屋大学大学院・准教授)先生は、学校現場が部活動や組体操に熱中していくリスクを訴えています。
この日は、第一に教師に「定額働かせ放題」を強いる給特法の問題点を指摘します。
また、教師の長時間労働を問題視しても、「教師のやりがい」論や「子どものため」論により、教師自身にはじかれてしまいがちとも。
ここら辺は、学校ならではの特殊性ですねえ。
「部活は制度設計がないことが問題」との指摘も頷けました。指導要領がないから過熱しやすい、強くなり勝ち進むとうれしい、楽しいからハマるといいます。
●でも、ここを乗り越えなければ進めないほどに、教師の長時間労働は深刻です。横浜の市立小中学校の平均的な教師の実例によると、ひと月の残業時間は150時間、過労死ラインと言われる残業80時間の倍近くになっています。しかも残業手当の支給はありません。
学校の課題は、教師の働き方・教育のあり方めぐって、引き続き切実です。
●「全国の会」とも結んだ「家族の会」の方々の活動は、精力的です。とりわけ首相悲願の「高度プロフェッショナル制度」の導入と「裁量労働制」の拡大、これらに反対する取り組みは、目を見張るものがあります。
厚生労働大臣への申し入れ、国会中央公聴会での公述、連日の国会での座り込み等々。
でもこの魂の声、事実に基づく告発に政権は耳を貸しません。この日衆議院厚生労働委員会は、「働き方改革」関連法案を強行採決しました。
働く人の命を奪い、家族に地獄を味あわせる、こんな無謀に手を貸す法案を乱暴に推し進める政権、本当に許せません。(2018.5.25)