●忙しいさなかですが、女性労働問題研究会主催の女性労働セミナーに参加しました。会員でもある私は、毎年参加しています。
女性労働問題研究会の特徴は、研究者と働く女性によってつくられていることです。現場の問題に直面している働く女性や活動家が参加しているのが、通常の学会とは違う点ですが、一方で系統的に問題を深めている研究者の存在も魅力です。
両者の相互作用により、事の本質に迫る調査や研究が可能になっていると思います。私は実際これらから優れた示唆を得てきました。
●さて今回のテーマは、「介護における女性労働のゆくえ」副題が「グローバル化と揺らぐ準市場」です。
五つの角度から報告がありましたが、最も印象的だったのは「フィンランドのケアワーカー『ラヒホイタヤ』養成の理念とスキル」でした。
「ラヒホイタヤ」とは、10の資格を統合した保健医療部門の基礎資格のことです。
この資格のことはさておいて、私が注目したのは、フィンランドなどにおけるケアサービスの位置づけについてです。
「サービス供給の責任は、国家・自治体にあり、個々人や家族ではない」ことが、社会ケア法に明記されているのです。「国民一人一人に、いつでも必要な時に必要な社会サービスを受ける権利がある」とされています。これは「国家と国民との約束」であり、政権交代の影響は受けないとのことです。
●80年代後半から90年代前半にかけての世界的不況の中で、イギリス、アメリカ、日本等で小さな政府論が幅を利かせましたが、北欧の国々では「大きな政府」を継続しました。
その為に、サービス構造改革を行ったそうです。その一つは「施設ケアから在宅ケアへ」です。日本との違いは、家族への丸投げではなく在宅ケアサービスの充実を図っている事です。
現在の目標は施設6%、在宅94%とのことです。
またひとつにはサービス供給の多元化めざし、ケア人材の養成改革が行われています。そこから「ラヒホイタヤ」養成も始まりました。
●フィンランドにおいても困難な要素は少なからずあるようですが、公平や平等という価値に基づく「社会連帯」が国家の基本理念となっているそうですから、日本とは、同じ手法を用いたとしても現れ方はずいぶん違ってくるだろうなと思いました。
国家の哲学ともいうべき、人間を尊重する理念が営々と息づいているのが何とも心強くうらやましい限りです。(2017.9.24)