●日本共産党中原区後援会の総会記念講演は、農民連副会長の笹渡義男さんによる「食と農の危機をどう打開するか」。
●とても基本的な事なのでおさらい的に。見出しだけでも問題点がよく解ります。
1.食と農の現実
1-1)異常な低自給率の下で進行する生産基盤の破壊
①カロリー自給率38%、穀物自給率28%、唯一自給可能なコメが不足に
②農家数・農業者数・農地面積の激減
*販売農家2010年163万戸→ 2020年103万戸
*基幹農業従事者240万人→ 111万人
*耕地面積1961年から200万㌶減少
③世界は金で食糧を変える時代ではなくなった
*気候危機・コロナ禍・ウクライナ危機、戦後最悪の食糧危機(国連)
*食品価格の高騰、10年前より2割以上高く
1-2)米不足はなぜ発生したか
①脆弱な稲作基盤が、コロナ時の政府の無策で大打撃
*コロナ禍でインバウンド・外食・昼食が縮小。JAの米価概算金が前年より4500~6200円下落。米60キロの全国平均生産費は15、273円(2023年)
*農民連は政府が「過剰米」を買い入れ、価格回復を図るよう求めたが、政府は拒否。米の「過剰」を理由に減反を押し付け。
*時給10円の低米価は経営を圧迫、減産も追い打ちをかけ中小零細農家の離職が相次ぐ。
②コロナ禍が明け、国民生活や経済活動が復活して一気に米不足が表面化
*2024年春、コメ業者が異常な高値でコメを求める動きが。
*農民連は政府に「米不足」を指摘。備蓄米の放出と増産を要求。共産党も同様の要求。政府が拒否しているうちに米が消え、価格は倍に跳ね上がり「コメ騒動」が。
③米不足は解決していない
*25年も再び不足。政府の随意契約による備蓄米の放出は、問題解決にならない。91万トンあった備蓄米は7.3万トンに減少。深刻な米不足のまま推移。
④アメリカ産との置き換えを画策
*トランプ協議、アメリカ産米の輸入拡大で合意。石破・小泉氏は、主食用にMA(ミニマムアクセス)米の使用を公言。
⑤米不足問題の結論-自民党新自由主義農政の破綻
*政府が国民の主食に対して責任放棄、市場丸投げ。
*コロナの需要減少を口実にさらなる大減産押し付け。
*国内で減産しながら、MA米77万トンを輸入。
2 日本の食の危機はなぜ作られたのか
2-1)戦後のアメリカの世界戦略と対米従属(日米安保条約・MSA協定)
*ヨーロッパの復興・朝鮮戦争の終結で行き場を失った大量のアメリカの農産物。MSA協定(日米相互防衛援助協定)はその受け皿に。
*MSA協定締結の1954年、学校給食法を制定。付則には「学校給食とは、パン、副食及びミルクである」と規定。日本はアメリカ農産物の最大の顧客。
*1955年以降、粒食民族を粉食(パン)に変える大キャンペーンを展開。これらの結果、年間一人当たり150kgコメ消費量は減少、減反の根拠ともなる。
2-2)流れを加速させた「新安保条約」(1960年)
*1961年「農業基本法」制定。輸入と競合しない作物を奨励。大豆・小麦・菜種・飼料作物などの生産をやめて輸入に切り替え。農林水産物の9割以上が輸入自由化に。1988年牛肉・オレンジの自由化、1994年のガットウルグアイラウンド合意でコメも自由化の対象に。
3 食と農の危機をどう打開するか
3-1)政府が危機を認識して増産、農業再生に踏み出すことが不可欠
*食料自給率の向上を柱に据えて生産者の確保・育成、耕作放棄地の復活、国家プロジェクトとしての再生策が必要
*カギとなる政策は価格保障・所得補償。主要国で価格保障をしていないのは日本だけ。
3-2)自公政治は食と農の危機を契機に、より反動的方向に踏み出そうとしている
*2024年改定基本法は「戦争する国」に備えたもの
3-3)自公の衆参の過半数割れは希望、参議院で野党が農業所得補償で足並みを揃えたことは大きな変化
*衆議院選挙で立・国・れ・共・社民は「自給率50%」を掲げた。
*2024年改定基本法に共同して反対したことが基礎に。
3-4)新自由主義による大規模化・効率化の工業的農業から家族農林漁業を基本に持続可能な「アグロエコロジー型」への転換
*アグロエコロジーは生態系を守り、その力を活用する農業と食をつくる社会運動。
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〇農業問題がすっきりと整理できました。危機的な現状、一方でわずかな変化と、再生への道筋も。
〇市長選を控え、予定候補ののずえ明美さんも挨拶と決意を。(2025.9.7)