● 神奈川県は、「かながわ方式による水ビジネス」と称して、箱根町で民間委託を実施しています。
箱根町には「町営水道」と「県営水道」の二つの事業体があります。このうち神奈川県企業庁箱根水道事業所が行ってきた業務を「箱根水道パートナーズ株式会社」に包括委託しました。
県は「委託された民間企業が、水道事業全般を実施することによって、水道運営のノウハウを習得し、事業展開できるように支援する」としています。
● 箱根水道パートナーズ(株)は、この支援を受けるべく特別目的会社として、JFEエンジニアリング(株)・県管工事業協同組合・(株)西原環境グループなどが選定事業者となって設立されました。
県と、2013年から2019年3月までの契約を結び、昨年4月から事業を開始しています。
● 今回、その箱根水道パートナーズ(株)を訪れました。門柱には当然ながら、「神奈川県企業庁 平塚営業所箱根水道センター」の表示があります。
所長さんにお話を伺いました。地域に認知されるよう努力している、業務全般問題なく推移している、とのことでした。経営上の心配をせずに仕事ができるのは、包括委託ならではのことです。
現在は4名の県職員が常駐しています。当初は、引き継ぎ要員として事業開始後6か月の駐在と聞いていましたが、延長になっているのでしょう。
包括委託とはいえ、県は「委託後も、県営水道が責任をもって安全・安心の水道水を提供する」としていますから、経験豊かな県職員が頼りになる存在であることは間違いありません。
● 水道法第1条は「公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする」とうたっています。実際水は、私たちの命と健康にかかわります。
今後包括委託が終わり、県が目指す民営事業となった場合に、安全に安定的にかつ低廉な水が提供されるかどうか、私は不安に思っています。
企業としての第一目的である利潤の追求と水道法第1条の目的を両立させることは簡単ではありません。国策にも影響され、水道事業赤字の自治体も少なくありません。もし企業が経営的困難に直面した時には…、また他の外部委託にもみられるように限りなく働く人の低賃金化が進まないか…等が、頭をよぎります。
神奈川県があえて民営化を進めることに、大きな疑問を持ちながら水道センターを後にしました。(2015.8.24)